ページが見つかりませんでした – LeverN|経営管理・投資財務戦略のアドバイザー https://levernltd.com LeverNは、会社経営管理・事業投資・資本政策の課題に答え、経営における決断と実行をご支援します。ファイナンス、会計税務、法務、ビジネス等、複合的見地に立って数値を”扱う”ことで、M&Aや株式上場においてより良い結果が得られるようサポートします。 Wed, 14 Jun 2023 02:26:12 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=5.9.3 スタートアップ企業(ベンチャー企業)のバリュエーション https://levernltd.com/startup_valuation https://levernltd.com/startup_valuation#respond Wed, 10 May 2023 10:53:33 +0000 https://levernltd.com/?p=1229 スタートアップ企業(ベンチャー企業)への投資においては、サービスや製品の将来性、経営者の資質、チーム力等の評価が重要なのはもちろんですが、法人がスタートアップ投資に営利として取り組む以上は定量評価も重要です。

本稿では、事業会社がスタートアップ企業(ベンチャー企業)を評価する際の手法について説明します。

主な対象者

  • スタートアップ企業(ベンチャー企業)の買収を行うM&A担当者

スタートアップ企業(ベンチャー企業)のバリュエーションにおける課題

事業基盤が未成熟なスタートアップ企業への投資は、成熟企業への投資に比べて定量的な評価が相対的に難しいといえます。
サービスや製品が未完成の段階では、売上が見込み通りに発生すること自体に不確実性が高く、すぐに儲けが出るケースは極めて限定的です。
サービスや製品の拡大期にあっても投資先行で赤字が続くこともあります。

上場会社へ投資する際に利用する、利益をベースとしたマルチプル法が利用できなかったり、上場会社のリスクやリターンを参照する評価手法では評価額が過大となったりする可能性があります。

従って、何らかの方法で一般的なバリュエーション手法を修正する必要があります。

スタートアップ企業(ベンチャー企業)のバリュエーション手法

1.マルチプル法

継続して利益の出る企業の投資(M&A)ではEV/EBITDA倍率が一般に利用されますが、この方法はEBITDAが赤字の企業には適用できません。

スタートアップ企業は、EBITDAがマイナスとなっていることも珍しくありません。

そのため、マルチプル法を利用する場合、EV/EBITDA倍率よりもPSR(ここでは、その派生である会員数や顧客数を利用する方法も含みます)の方が一般的です。EBITDAが赤字の企業でも利用できるからです。

PSRは、対象会社が将来成長した際の利益率が類似企業と同程度と仮定する評価手法です。
キャッシュ・フロー(CF)の源泉である利益を評価に利用しないため、CFを基礎に理論構成されているコーポレートファイナンスとは厳密には整合しません。しかしながら、コスト構造がシンプルな業種、競争力の源泉が売上高や売上数量になる業種においては一定の目安になるといえます。

2.DCF法

事業計画に基づき将来キャッシュフローを算定し、一定の割引率でこれを割引計算するDCF法はスタートアップ企業の評価でも頻繁に利用されます。

ただし、上場類似企業のデータに基づく割引率を利用すると評価額が過大になることが多いため、割引率は慎重に決定する必要があります。

スタートアップ企業のDCF法では、割引率にVC(ベンチャーキャピタル)が要求する投資リターンを利用することが多いです。
客観性を持たせるために一定の権威者の論文を参考にします。ハーバードビジネススクールのWilliam Sahlman氏や、ニューヨーク大学のAswath Damodaran氏が有名どころです。

3.VC IRR-NPV(正味現在価値)法※

※正式名称のある手法ではないため筆者が勝手に命名しています。ご了承ください。

通常、VCやPEは、EXIT時の投資回収見込額を現在価値に割り引いて投資額を決定するわけではありません。EXIT時の投資額の倍数(投資回収額/投資額。「マネーマルチプル」とか「Cash on Cash」と呼ばれます。)や投資期間のIRRが、ファンドの目標リターンを満たすように投資額を決定します。

IPOを目指しているスタートアップ企業への投資においては、この方法を応用したNPV法でバリュエーションすることが可能です。

金融投資家の株主の目線で考えた場合、スタートアップ企業への投資が成功した際のキャッシュ・イン・フローはIPO(上場後の売却含む)による投資回収額といえます。

そうすると、IPOによる投資回収額を一定のハードルレート(目標リターン=割引率)で割り引いて算定されるNPVは、ハードルレートを達成するために投資時点で支出可能な最大金額ということができます。具体的には以下の通りです。

この方法は、株主の目線で株主に直接帰属するCFだけを合計します。CFを割り引く点ではDCF法と類似しますが、DCF法は投資対象企業の目線で事業から生み出される全てのCFを合計(株主だけでなく債権者に帰属するCFも合計)する点で異なります

一般に、この方法は安定した利益の出る会社のバリュエーションレポートの作成では用いられません。 しかしながら、スタートアップ企業のDCF法同様、VCが要求する投資リターンをハードルレートと見做して株主に帰属するCFのNPVを算定することで、理論的には投資ファンドと近い方法での評価が可能となります。

株式会社LeverNでは、スタートアップ(ベンチャー)企業のバリュエーションや資金調達支援も行っています。お気軽にご相談ください。

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デュー・ディリジェンス(DD)で発見された事項の活用 https://levernltd.com/ma_duediligence2 https://levernltd.com/ma_duediligence2#respond Wed, 08 Jun 2022 12:57:53 +0000 https://levernltd.com/?p=1114 前稿では、M&Aで行われるデュー・ディリジェンス(DD)とは何か、その種類と概要、実施者について説明しました。

本稿では、DDで発見された事項の活用方法をご紹介します。

主な対象者

  • 事業や会社の買収を行うM&A担当者

そのデュー・ディリジェンス(DD)、有効活用できていますか?

デュー・ディリジェンス(DD)を実施したけれど有効活用できていない、そんな会社は意外と多いように思います。

DDは、M&A担当者が、買収対象の会社(対象会社)を理解するためだけに行うわけではありません
同様に、経営陣やM&A責任部門のアリバイ作りのために行うものでもありません

DDでリスクを発見しても、その重要性を評価して許容可能な水準にまで低下させなければ、分かった気になっただけで、DDを実施した意味がなくなってしまいます。
同様に、将来の伸びしろ(収益拡大・費用削減機会)を発見したとしても、これを実現させるための施策を講じて働きかけなければ、伸びしろは”可能性”のまま消え去ってしまうでしょう。

DDにかけたお金を無駄にしないためには、その結果を経営意思決定や改善活動に活かすことが重要です。

デュー・ディリジェンス(DD)結果の活用タイミング

では、DD結果(発見事項)を活かすためにはどのようなタイミングで、何をすればよいでしょうか?

DD結果は、(i)M&A実行(基本合意から買収実行まで)フェーズと(ii)買収実行後のフェーズのそれぞれで活用可能です。

以下では具体的に、(i)(ii)それぞれの場合における活用方法を見ていきます。

M&A実行フェーズでのDD結果の活用方法

M&A実行フェーズにおけるDD結果の活用とは交渉に反映させることです。

それには、大きく4つの方法があります。

  1. 契約書(株式譲渡契約書や株主間契約書)に反映させる
  2. 買収価格に反映させる
  3. 買収方法に反映させる
  4. 買収を断念する(交渉を中止する)

M&Aは、買手と売手が交渉の結果、合意(契約締結)して、決済して終了となります。その後は、原則、買手は対象会社のリスクを負担するとともに、将来得られる果実を享受していくことになります。

ここで例えば、A、B、C3つの事業を営む対象会社の株式取得案件において、DDにて、C事業で裁判になっていることが発見されたとします。この裁判は、買収後も続くことが明らかであったとします。

4つの方法を当てはめていくと以下のようになります。

①契約書に反映させる

例えば、将来、裁判で負けて損害賠償請求された際には、その損害を売手が負担するよう契約書で定める方法が考えられます。

ただし、契約書に反映させるテクニックは非常に専門的です。
必ずM&A経験が豊富な弁護士に相談しましょう。

②買収価格に反映させる

C事業の裁判から生じるマイナス影響を試算し、買収価格に反映する(価格を下げる)ことも一案です。
とはいえ、売手にとっては価格を下げられることは面白いことではないですので、案件の状況を見定めながら慎重に行う必要があります。

買収価格の増減について不安がある場合には、M&Aのアドバイザー、契約交渉を担当する弁護士、財務DDを行った会計士等に相談するとよいです。

③買収方法を変更する

例えば本ケースにおいて、買手が興味のある分野がA事業とB事業のみである場合や、裁判のリスクが①②を採り得ないほど大きい、または不明確と判断した場合等では、買収方法(”ストラクチャー”や”買収スキーム”と呼ばれます)の変更を打診することも考えられます。

例えば、株式取得から、C事業以外(A事業とB事業)を会社分割で切り出して取得する方法へ変更する等です。

買収方法を変更する場合、法的な建付けや実現可能性に加え、税金影響についても再考する必要があります。弁護士だけでなく、組織再編税制に強い会計士や税理士にも併せて相談しましょう。

④買収を断念する

「DD費用を払ったのに買収できなくてもったいない」と思うかもしれませんが、将来、大損失を被るくらいなら、潔く撤退!というのも立派な経営意思決定です。
現実でも、買収を断念することはそれなりの頻度で発生します。

買収実行後のフェーズにおけるDD結果活用方法

買収実行後のフェーズにおけるDD結果の活用は、経営における改善活動そのものです。

具体的には、DDでの発見事項に関する事実確認が完了次第、発見事項への対応方針、対応時期、成果目標を定め、責任者を決めて、目標達成まで進捗状況をフォローしていくことといえます。

大規模案件では、こうした活動について戦略系・総合系コンサルタントの力を借りてプロジェクト化し、事業戦略の立案、課題の共有、行動計画の策定からそのモニタリングまでを分野横断的に行っていくこともあります。

一方、小~中規模案件では、買手が自ら、あるいは、特定分野のみ外部の専門家を起用してDD結果に対応することが一般的です。典型的なDD発見事項としては、例えば以下のような内容が挙げられます。

  • ビジネスDDでコスト削減余地が見つかった
  • 財務DDで計数管理体制の不備が指摘された
  • 法務DDで労務管理の不備が発見された
  • ITDDで売主のシステムからの離脱(独自のシステム投資)の論点整理がなされた

小~中規模案件の場合、DD結果への対応難易度が高すぎて手も足も出ない、ということは少ないため、“やるべきことの明確化”“優先順位付け”、そして何より“やる気”が重要です。
責任者のもとで目標に向かって動き出し、諦めずに走り続けられれば、実施したDDが無駄になることは無いはずです。

株式会社LeverNでは、M&Aのアドバイザリー業務や財務DD業務を行っています。
また、小~中規模案件においては、M&A実行後(投資実行後)の計数管理強化支援や、やるべきことの整理、課題の優先順位付け等のサポートも行っています。
M&A実行時、実行後それぞれで、DD結果を有効活用するお手伝いが可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

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デュー・ディリジェンス(DD)って何をするの?誰が行うの? https://levernltd.com/ma_duediligence https://levernltd.com/ma_duediligence#respond Fri, 26 Nov 2021 03:43:52 +0000 https://levernltd.com/?p=973 M&Aの浸透と共に、デュー・ディリジェンス(DD:「デューデリ」とか「ディーディー」と呼ばれることもあります)という用語を耳にしたことがある人は増えてきたと思います。
しかしながら、一般にどのような事を行うのか、誰が関与するのか、その重要性や発見事項の活用方法については正しく理解されていないことが多いです。

そこで、まずは、本稿でM&Aで行われるデュー・ディリジェンスとは何かを説明したいと思います。

主な対象者

  • 初めて、事業や会社の売却を行う会社のオーナー社長/売却担当者
  • 事業や会社の買収に不慣れな会社のM&A担当者

そもそもDDとはどういう意味なのか?

英語のDue Diligenceの略で、M&Aにおいては買収実行前に行われる詳細な調査を指します。

Dueという単語は、期日性のある事柄における「責務・返済義務」や、由来を示す「原因」「正当な」等の意味で使われます。
Diligenceという単語は、愛する、心を傾けるといった語源から「勤勉」「入念」といった意味で使われます。

このDueという単語とDiligenceという単語を並べると、その意味は「期日ある中で入念に果たすべき責務」といったところでしょうか。これが会社や事業の合併買収の局面では、冒頭記載したような調査業務を指すことになりました。

DDは誰が行うのか?

M&AにおけるDDは、一般に、買手が専門家の協力を得ながら行います。
ただし、大きな案件では、売手(株主、または、売却後も残る事業)が、売却対象事業や企業の情報を整理するために行われることもあります。

DDは自分でやってもいいの?

勿論OKです。

しかしながら、少額案件を除けば、DDで専門家を活用することは多いです。それには以下の理由があります。
リソースの問題:社内にDDを実施できるスキルを有した人材がいない、あるいは、スキルを有した人材がいても他の業務がありM&Aに注力できない
客観性の問題:第三者の見立てが知りたい
特に、財務DDと法務DDは、様々な分野の人材を社内に抱える大企業やファンドですら、専門家を起用して実施することが多いといえます。

DDは、誰が行うかによって差が出るものなのか?

大きな差が出ます!

M&Aの実行(エグゼキューション)フェーズにおいて、誰が行うかによって成果に大きな差が生じる業務がDDと交渉(契約・価格)です。

DDと交渉の2つの業務において専門家を活用するならば、安易に知り合いの会計事務所や弁護士事務所に頼むのではなく、必ず、M&Aの経験が豊富で実力のある弁護士事務所や会計事務所、M&A専門会社に依頼しましょう!

長年、M&Aや再生、投資に関わっている人間ならば、DDの報告書や株式譲渡契約書(及びその交渉履歴)を少し見るだけで、関与した外部専門家の経験や実力が簡単に判別できます
そして、DDや交渉の巧拙は、ほとんどの場合でM&Aのその後の成果を左右します。

逆に、M&Aの経験に乏しい弁護士、会計士、税理士、コンサルタントをDDや交渉に起用するくらいならば、専門家を起用せず自前で行った方が良いでしょう。

どんな規模のM&AでもDDは必要か?

必ずしもそうではありませんが、DDは可能な限り実施すべきと考えます。

前述の通り、DDは自ら行ってもいいわけです。
昨今では、個人が買手となる小規模M&Aも増えてきていますが、このような場合でも、ご自身で出来る限りの調査はするべきです。なぜならば、M&Aでは、自らの財力・規模と比較して小規模な案件でも、買手に大きな損害を与える可能性があるからです。
自らの規模と比較して小規模なM&Aから大きな損失が発生した例として、東芝がSB&I社から買収したS&W社が挙げられます。

この案件は、総資産5兆円を超える会社(東芝)が行った140億円規模のM&Aでした。
自社グループの総資産と比べれば0.3%程度の規模です。1億円の資産を持っている方であれば、百万円未満のM&Aを行うイメージです。
しかしながら、この会社には数千億円の偶発債務が潜んでいました。結果として、東芝は、米国子会社が連邦破産法11条の適用に追い込まれました。

東芝ほどの大企業がDD未実施で買収したということは考えられないでしょう。
しかし、M&Aでは、時に、M&Aに手慣れた企業が一定の注意を払っても、こうしたことが起こり得るのです。
DDですべてを把握することは不可能ですが、買収前に出来る限りの調査はしたいものです。

DDにはどんな種類があるのか?

DDの種類は特に限定されていません。
買手が何を調べたいか」によって無限に種類があります。
「このDDは必ず専門家が行わなければならない」という決まりはないですし、逆に「このDDだけやっておけばいい」ということでもありません。

とはいえ、M&Aにおいて多くの買手が共通して気になる事項(調査したい事項)というのもあります。典型例が以下の内容です。

  • ビジネスDD将来予測と事業理解に資する情報が欲しい
    ⇒調査内容は、買収対象の事業モデル、市場環境、競争環境・競争力等
  • 財務DD(会計・税務)過去実績と足元のBSの内容を把握したい
    ⇒調査内容は、会計帳簿や申告書、会計処理の方法等
  • 法務DD:事業を取り巻くルールを理解し将来影響を把握したい
    ⇒調査内容は、関連する法律や契約、過去の行為や承認方法等
  • 環境DD:買収対象に潜む環境リスクを把握したい
    ⇒調査対象は、土壌や空気の汚染、騒音、有害物質の取扱いや管理状況等
  • ITDD:ITの管理体制や新規性、活用度合いを確認したい
    ⇒調査対象は、IT基盤、ソフト、開発体制、予算、役職員のリタラシー等

予算が無いけど専門家にDDを依頼したい、そんな時は?

DDの種類と実施範囲を絞り込めば、小さい金額でDDを専門家に依頼することも可能です。
例えば、財務DDで対象とする過去の期間を直前事業年度のみとする、法務DDでチェックする契約を限定する、報告様式を問わない、等の方法が挙げられます。

勿論、専門家が検証する範囲が狭まる分、自ら調査する責任とリスクを伴うことになりますが、こうした対応は、リスク量と発生可能性次第では十分検討に資すると思います。

DDはどのくらいの期間をかけて行うのか?

DD期間に決まりは有りませんが、売手や買収対象会社/買収対象事業の協力が得られる場合(求められた資料の提出やインタビューがスムーズに行えた場合)には、1ヶ月以内に完了することが一般的です。

成約を急ぐ必要はありませんが、それでも、M&Aの成否にスピード感は大きく関わってきます。
買収対象の規模が大きくなると、調べても調べても新たな事実が発見されるので、ある種の割り切りも重要です。モメンタムを失わぬよう、期限を決めて実施することが必要になります。

株式会社LeverNでは、様々な企業やファンドに財務DD業務を提供しております。併せて、他の種類のDDについても、経験豊富で実力のある弁護士事務所やコンサルタントの紹介が可能です。お気軽にお問い合わせください。

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財務モデル作成(モデリング)の際に留意すべき税効果会計 https://levernltd.com/financial-modeling https://levernltd.com/financial-modeling#respond Wed, 17 Feb 2021 01:37:00 +0000 https://levernltd.com/?p=819 今回は、税効果会計と財務モデル作成(モデリング)の関係性について解説します。意外な組み合わせですが、一定の条件下では思わぬ落とし穴があります。 本稿は、モデリングに関する基本的理解があることを前提としています。

主な対象者

  • 上場企業や企業会計を適用する非上場企業でM&A業務に従事する方
  • 投資銀行やPEファンドでモデリング業務に従事する方

M&Aや事業投資における財務モデル

財務モデルとは、損益やキャッシュ・フロー、投資採算がどう変化するかをシミュレーションするツールです。前提(投資金額、単価、数量等)を変えたら結果(損益、キャッシュ・フロー、投資採算)が自動計算で変化するよう、計算式をスプレッドシートに組み込んで作成します。

M&Aや事業投資においてモデリングに手慣れてくると、キャッシュ・フローに影響する勘定科目のみを別掲し、そうでない勘定科目は「その他」でまとめて横置きすることが多いかと思います。
財務モデルの目標とする投資採算試算や調達資金の返済可否判定は、通常、キャッシュ・フローを基に行われます。換言すれば、通常は、キャッシュ・フローに影響する勘定科目以外はその判断に影響しないともいえます。

その意味で、一般論としては、税効果会計を意識して財務モデルを作成することは多くないです。

モデリング実務において税効果会計に留意すべき場合とは

モデリング実務で税効果会計に気を付けなければならないのは、(i)LBOローンなどの買収ファイナンスが必要な案件で、(ii)資産調整勘定や繰越欠損金が生じる場合(会社分割や事業譲受が絡む案件、繰越欠損金のある会社の株式を取得する案件)です。

以下では、資産調整勘定に対する繰延税金資産が全額計上できる場合を例に説明します。

まず、資産調整勘定に税効果会計が適用されることは前稿「資産調整勘定(税務上ののれん)と会計上ののれんの違い」で説明しました。資産調整勘定は5年間で月割均等償却しますので、見合いで計上する繰延税金資産も5年間で取り崩していくことになります。
繰延税金資産が漸減するということは、税効果会計適用後の当期純利益が、税効果会計適用前の当期純利益よりも小さくなることを意味します。

LBOローンなどの買収ファイナンスでは、企業会計の適用が義務付けられたうえで、財務制限条項(守るべき財務指標)が設定されます。契約交渉で財務制限条項を極力減らすことができても、銀行の与信判断は依然として純資産重視ですので、「当期純利益」や「純資産(またはD/Eレシオ)」を基礎とする指標は残ることが多いです。

買収価格を引き上げるために高いレバレッジ水準のファイナンスに取り組む場合や、ダウンサイドケースの業績下降がきつい場合などは、税効果会計の影響を反映した財務モデルを作らないと、財務モデルより現実の方が「当期純利益」や「純資産」関連の財務制限条項にヒットしやすくなる(≒使えないモデルを作ってしまうことになりかねない)のです。

「当期純利益」や「純資産」関連の財務制限条項が付く案件では、資産調整勘定や繰越欠損金にだけでもいいので税効果会計を適用して財務制限条項の判定をすることが賢明です。

株式会社LeverNでは、ストラクチャリングやモデリングの支援を行っています。お気軽にお問い合わせください。

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資産調整勘定(税務上ののれん)と会計上ののれんの違い https://levernltd.com/goodwill https://levernltd.com/goodwill#respond Sun, 14 Feb 2021 01:14:00 +0000 https://levernltd.com/?p=725 本稿では、資産調整勘定(税務上ののれん)とは何か、のれん(会計上ののれん)とは何かを説明するとともに、資産調整勘定とのれんの違いについて、税効果会計を絡めながら説明します。
「M&A実務と税効果会計」「税効果会計とバリュエーション(企業価値評価)」に続く税効果会計の第3回目です。

主な対象者

  • 上場企業や企業会計を適用する非上場企業の財務経理部門の方
  • 買収スキームの組成(ストラクチャリング)に携わる方
  • 税効果会計やM&Aの実務に苦手意識のある公認会計士・税理士

資産調整勘定と

資産調整勘定は、税制非適格とされる組織再編行為(例えば、金銭対価で行われる合併や会社分割等が該当)における、買手の支払額と税務上の時価純資産の差額です。

資産調整勘定=買手の支払額-対象事業/会社の税務上の時価純資産
※算定結果がゼロより小さい場合は、資産調整勘定ではなく差額負債調整勘定といいます

資産調整勘定や差額負債調整勘定は、税務申告書(税務上のBSを表示する別表五(一)に計上)には表示されますが、決算書(会計上のBS)には表示されません。
前々稿「M&A実務と税効果会計」で説明した、会計上のBSと税務上のBSの差のうち『税務上は資産として認められるが、会計上は認められないもの』に該当しますので、税効果会計の適用対象になります。

因みに、税務上の時価純資産は、会計上の時価純資産とは必ずしも一致しません。後述の「数値を使った説明」の通り、税務上の時価純資産では、引当金や繰延税金資産等、税務上の概念として存在しない資産負債はその算定に影響させませんのでご注意ください。

のれんとは

対して、「のれん」(会計上ののれん)は、会計上のBSに計上できる全ての資産から全ての負債を控除した金額(純資産)と、買手の支払額の差額から求められる配分残余です。
①資産調整勘定や差額負債調整勘定が計算され、②これに対する繰延税金資産負債を会計上のBSに計上し、③さらに会計上のBSに計上できる資産負債を出し尽くしてなお最後に残ったものですので、税効果会計は適用されません

のれん=買手の支払額-(対象事業/会社の会計上の全ての資産-全ての負債)
※算定結果がゼロより小さい場合は、「のれん」ではなく負ののれんといいます。

のれん算定の具体的ステップ(PPAはここでは省略)は以下の通りです。

資産調整勘定と「のれん」は全くの別物

資産調整勘定と「のれん」は全くの別物です!
多くのサイトで、資産調整勘定と会計上ののれんが混同されて説明されています。専門家でも混同することが多い背景には、資産調整勘定が「税務上ののれん」と呼ばれることにあると思われます。
税効果会計の観点からいえば、税効果会計が適用されるのが資産調整勘定で、適用されないのがのれんです。

資産調整勘定には節税効果があるが「のれん」には節税効果はない

資産調整勘定は、5年間の月割均等償却により損金としていくため、節税効果を生みます。
従って、資産調整勘定に対して計上される繰延税金資産は、将来の累計節税見込額を税額ベースで会計上のBSに表したものといえます(差額負債調整勘定はその逆)。

一方、会計上ののれんは、日本基準では償却していく点において資産調整勘定と類似しますが、その償却期間は各企業及び各案件で異なります(20年以内)。
また、前述の通り、のれんは配分残余にすぎませんので、のれん償却費に節税効果はありません(税務上は損金となりません)。

株式会社LeverNでは、買収スキームの組成やその会計税務影響の試算等をサポートしております。お気軽にお問い合わせください。

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バリュエーション実務で留意すべき税効果会計 https://levernltd.com/deferred-tax-and-valuation https://levernltd.com/deferred-tax-and-valuation#respond Thu, 11 Feb 2021 23:01:00 +0000 https://levernltd.com/?p=701 前稿「M&A実務と税効果会計」から引き続き、今回は、買手のバリュエーション(企業価値評価)実務において留意すべき税効果会計の典型例を説明します。
以下において、買手は企業会計を適用していることを前提とします。

主な対象者

  • 上場企業や企業会計を適用する非上場企業でM&A業務に従事する方
  • 上場企業や企業会計を適用する非上場企業の財務経理部門の方
  • 税効果会計やM&Aの実務に苦手意識のある公認会計士・税理士

純資産法で値付けする場合

まず注意したいのは、税効果会計を正しく適用していない企業を簿価純資産で売買する場合(簿価純資産法)です。
純資産法には簿価純資産法と時価純資産法がありますが、このうち、帳簿上の純資産額を株式価値とする簿価純資産法は、税効果会計が正しく適用されていない場合、買収金額が割高になる可能性があります。

具体的には、繰延税金資産が過大計上になっているケースと繰延税金負債が計上されていないケースです。

前稿「M&A実務と税効果会計」で記載したとおり、繰延税金資産は無条件に全額を計上できるわけではなく、過去の業績や繰越欠損金等の有無を勘案したうえで計上できる金額が決まります。
例えば、重要な繰越欠損金を抱えている会社は、場合によっては、流動項目に対してしか繰延税金資産を計上できません(「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」の分類4に該当するケース)。
対象会社が繰延税金資産を無条件で全額計上していた場合、その純資産額は、税効果会計を正しく適用した場合に比べ過大となっている可能性があります。

繰延税金負債が計上されていないケースとしては、例えば、税効果会計が適用されていない会社で、純資産の部に特別償却準備金がある場合等が考えられます。

なお、時価純資産法であれば、一般的には、含み損益のある資産の時価評価に加えて企業会計への修正も行うため問題にならないと思料します。

DCF法やマルチプル法で値付けする場合

DCF法やマルチプル法においても、含み益のある事業外資産がある場合には税効果会計の適用に留意が必要です。

例えば、含み益のある遊休土地を保有する会社を買収するとします。
買収後にこの遊休土地の売却を想定した場合、買手は、土地の時価相当の現金収入を企業価値に追加して得られるため、その分、株式価値を上乗せできます。

しかし、売却益には課税が生じるので、土地の時価をそのまま株式価値に上乗せしてしまうと、売却益に対する税金の分だけ損をしてしまいます。
土地の時価相当を株式価値に上乗せするならば、同時に、含み益に対する課税分(繰延税金負債相当)を株式価値から減額する必要があります。

株式会社LeverNでは、財務デュー・ディリジェンスやバリュエーションレポート(企業価値評価報告書)の作成業務を多数手がけております。
お気軽にお問い合わせください。

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M&A実務と税効果会計 https://levernltd.com/deferred-tax https://levernltd.com/deferred-tax#respond Mon, 08 Feb 2021 12:04:00 +0000 https://levernltd.com/?p=673 税効果会計は、企業会計において最高難度を誇る論点の1つです。経理マンでも難解なこの論点は、時に、M&A実務において重要な影響を与えることがあります。
やや会計寄りの論点ですが、全4回にわたって、企業会計を適用している会社のM&A実務担当者が覚えておきたい税効果会計の論点を解説します。

主な対象者

  • 上場企業や企業会計を適用する非上場企業でM&A業務に従事する方
  • 投資銀行やPEファンドでストラクチャリング・モデリング業務に従事する方

税効果会計とは

税効果会計とは、会計上のBSと税務上のBSの差の影響を、税額ベースで、会計上のBSに表したものです。勘定科目は、繰延税金資産/繰延税金負債を使います。
会計上のBSと税務上のBSで差が出る項目は以下の5つに整理できます。

No.1とNo.4に対しては繰延税金負債が計上され、No.2とNo.3に対しては繰延税金資産が計上されます。このほか、No.3に類似する項目として税務上の繰越欠損金があり、No.3同様、繰延税金資産が計上されます。

No.5の会計上ののれんは、繰延税金資産を含めた全ての資産から繰延税金負債を含めた全ての負債を控除した金額(純資産)と買手の支払額の差額であり、税効果会計は適用されません。これについては別の回でも解説します。

なお、繰延税金負債はもれなく計上しなければなりませんが、繰延税金資産は無条件に全額を計上できるわけではありません。繰延税金資産は、過去の業績や繰越欠損金等の有無を勘案したうえで計上できる金額が決まります。

税効果会計はM&A実務に影響を与える

税効果会計は、M&A実務においては、①バリュエーション(企業価値評価)、②のれんの算定、③財務モデリング作成の3つの局面で影響を与える可能性があります。それぞれ、別の回で詳解していきますが、概要は以下の通りです。

①バリュエーション(企業価値評価)において注意すべきケース
税効果会計を正しく適用していない対象会社を純資産法(純資産額)で売買する場合や、DCF法やマルチプル法の評価において事業外資産がある場合に留意が必要です。

②のれん算定局面において注意すべきケース
「税務上ののれん」と呼ばれる資産調整勘定と会計上ののれんが同じものだと誤解されているケースが良く見られますが、実際には全くの別物です。前述の通り、資産調整勘定には税効果会計が適用されますが、のれんには税効果会計は適用されません。

③財務モデル作成(モデリング)において注意すべきケース
資産調整勘定や繰越欠損金が生じる案件でLBOなどの買収ファイナンスに取り組む場合には、これらにかかる税効果をモデルに織り込まないとコベナンツの計算を誤ることがあります。

株式会社LeverNでは、税効果会計の導入をサポートするツールの作成・提供を行っています。また、財務デュー・ディリジェンス、バリュエーションレポートの作成、ストラクチャリングやモデリングの支援も行っています。
お気軽にお問い合わせください。

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IRRの計算方法と特徴 https://levernltd.com/irr_method_calcuration https://levernltd.com/irr_method_calcuration#respond Tue, 05 Jan 2021 07:13:06 +0000 https://levernltd.com/?p=586 今回はIRR法(Internal Rate of Return Method、内部収益率法)の2回目です。時間価値の学術的な説明はあえて省略し、直感的に分かるよう具体的な数値で説明したいと思います。

主な対象者

  • 事業会社の経営企画・財務・投資部門に所属している方
  • PEファンドの投資担当

IRR法では投資回収期間の早さが重要

IRR法には、投資回収がい方が有利に働くという特徴があります。
例えば、デットフリー・キャッシュフリー(企業価値=株式価値)でEBITDA倍率5倍の買収案件があり、この対象会社は、減価償却費と同等程度の設備投資を行っていけば営業利益を維持できるとします。以下の2ケースで、IRR法を用いて算定してみましょう。
ケース①:5年後に、EBITDAの5倍+累積FCFにプレミアム1,000を上乗せした金額で売却する
ケース②:FCFを全額配当で回収しながら継続保有する

ケース①とケース②は、15年間通算の資金回収額がどちらも10,500です。
一方で、IRRは、ケース①の5年後IRRが11.8%に対しケース②の15年後IRRは8.0%となりました。①の方が大きい値が算定されています。
この結果からも、IRR法は、早期の投資回収を重視する評価技法であることが分かると思います。
なお、”参考”として、割引率7%の場合のDCF法における割引現在価値も示しました。この場合は、ケース①で7,486、ケース②で10,000と、②の方が大きい値となります。

IRR法は、投資回収までの期間が3~5年程度の投資ファンドによる投資や、陳腐化の早い業種における設備投資などでフィットしやすいです。
対して、事業会社のM&Aでは、売却を前提としないことが多く、投資回収期間が長期化する傾向にあり、IRR法で算定すると利回りが小さくなりがちです。

設備投資意思決定への影響

IRR法は、買収後の設備投資の意思決定にも影響を与えます。
上の例において、買収後3年目に、対象会社にて以下のような合理化投資の実行機会がやってきました。
・初期導入設備は1,000(5年均等償却)
・初期導入投資は税引前CFの向こう4年分に相当
・償却完了後も、償却費相当の更新投資を継続していけば収益の維持は可能

現実にもし上記のような採算が見込める投資機会があれば、多くの業種/企業において魅力的に映るはずです。
ではこの案件、前述のケース①(投資後5年で当該対象会社を売却する)及びケース②(FCFを配当で回収しつつ継続保有する)において、投資採算をIRR法で評価した場合にはどうなるでしょうか?

ケース②では、合理化投資後の15年後IRRが10.3%となり、合理化投資前と比べてIRRが上昇しましたが、逆に、ケース①では、合理化投資後の5年後IRRは9.7%と合理化投資前より下がってしまいました
このことが示唆するのは、IRR法では、一見魅力的に思える投資案件でも、実行時期と測定期間次第では、投資採算を押し下げる可能性があるということです。

まとめ

IRR法の活用は、須く設備投資の妨げになるのでしょうか?
そうは思いません。
設備投資採算を試算し、実行後は計画時に見込んだ効果と実績を比較し、乖離が生じた際には必要な打ち手を講ずる、そのプロセスが実践できる規律ある会社なら、ケース①のような売却想定の場合でも、上記の合理化投資は推奨されるでしょう。
なぜなら、5年後の売却時に、次の買手候補者に対して、過去の実績を基に設備投資の効果を説得力を持って説明できる、即ち、より良い事業計画を提示できるからです。

本稿第1回でも説明しましたが、IRR法による投資採算(評価)と、投資基準(規律)は一体となって有効に機能します。IRR法を採用している企業は、自社のみならず、買収先に対しても投資基準(規律)を導入し、正しい意思決定をしていきたいですね。

株式会社LeverNは、買収先(投資対象)の管理体制構築支援業務を得意としています。
お気軽にお問い合わせください。

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