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デュー・ディリジェンス(DD)で発見された事項の活用

前稿では、M&Aで行われるデュー・ディリジェンス(DD)とは何か、その種類と概要、実施者について説明しました。

本稿では、DDで発見された事項の活用方法をご紹介します。

主な対象者

  • 事業や会社の買収を行うM&A担当者

そのデュー・ディリジェンス(DD)、有効活用できていますか?

デュー・ディリジェンス(DD)を実施したけれど有効活用できていない、そんな会社は意外と多いように思います。

DDは、M&A担当者が、買収対象の会社(対象会社)を理解するためだけに行うわけではありません
同様に、経営陣やM&A責任部門のアリバイ作りのために行うものでもありません

DDでリスクを発見しても、その重要性を評価して許容可能な水準にまで低下させなければ、分かった気になっただけで、DDを実施した意味がなくなってしまいます。
同様に、将来の伸びしろ(収益拡大・費用削減機会)を発見したとしても、これを実現させるための施策を講じて働きかけなければ、伸びしろは”可能性”のまま消え去ってしまうでしょう。

DDにかけたお金を無駄にしないためには、その結果を経営意思決定や改善活動に活かすことが重要です。

デュー・ディリジェンス(DD)結果の活用タイミング

では、DD結果(発見事項)を活かすためにはどのようなタイミングで、何をすればよいでしょうか?

DD結果は、(i)M&A実行(基本合意から買収実行まで)フェーズと(ii)買収実行後のフェーズのそれぞれで活用可能です。

以下では具体的に、(i)(ii)それぞれの場合における活用方法を見ていきます。

M&A実行フェーズでのDD結果の活用方法

M&A実行フェーズにおけるDD結果の活用とは交渉に反映させることです。

それには、大きく4つの方法があります。

  1. 契約書(株式譲渡契約書や株主間契約書)に反映させる
  2. 買収価格に反映させる
  3. 買収方法に反映させる
  4. 買収を断念する(交渉を中止する)

M&Aは、買手と売手が交渉の結果、合意(契約締結)して、決済して終了となります。その後は、原則、買手は対象会社のリスクを負担するとともに、将来得られる果実を享受していくことになります。

ここで例えば、A、B、C3つの事業を営む対象会社の株式取得案件において、DDにて、C事業で裁判になっていることが発見されたとします。この裁判は、買収後も続くことが明らかであったとします。

4つの方法を当てはめていくと以下のようになります。

①契約書に反映させる

例えば、将来、裁判で負けて損害賠償請求された際には、その損害を売手が負担するよう契約書で定める方法が考えられます。

ただし、契約書に反映させるテクニックは非常に専門的です。
必ずM&A経験が豊富な弁護士に相談しましょう。

②買収価格に反映させる

C事業の裁判から生じるマイナス影響を試算し、買収価格に反映する(価格を下げる)ことも一案です。
とはいえ、売手にとっては価格を下げられることは面白いことではないですので、案件の状況を見定めながら慎重に行う必要があります。

買収価格の増減について不安がある場合には、M&Aのアドバイザー、契約交渉を担当する弁護士、財務DDを行った会計士等に相談するとよいです。

③買収方法を変更する

例えば本ケースにおいて、買手が興味のある分野がA事業とB事業のみである場合や、裁判のリスクが①②を採り得ないほど大きい、または不明確と判断した場合等では、買収方法(”ストラクチャー”や”買収スキーム”と呼ばれます)の変更を打診することも考えられます。

例えば、株式取得から、C事業以外(A事業とB事業)を会社分割で切り出して取得する方法へ変更する等です。

買収方法を変更する場合、法的な建付けや実現可能性に加え、税金影響についても再考する必要があります。弁護士だけでなく、組織再編税制に強い会計士や税理士にも併せて相談しましょう。

④買収を断念する

「DD費用を払ったのに買収できなくてもったいない」と思うかもしれませんが、将来、大損失を被るくらいなら、潔く撤退!というのも立派な経営意思決定です。
現実でも、買収を断念することはそれなりの頻度で発生します。

買収実行後のフェーズにおけるDD結果活用方法

買収実行後のフェーズにおけるDD結果の活用は、経営における改善活動そのものです。

具体的には、DDでの発見事項に関する事実確認が完了次第、発見事項への対応方針、対応時期、成果目標を定め、責任者を決めて、目標達成まで進捗状況をフォローしていくことといえます。

大規模案件では、こうした活動について戦略系・総合系コンサルタントの力を借りてプロジェクト化し、事業戦略の立案、課題の共有、行動計画の策定からそのモニタリングまでを分野横断的に行っていくこともあります。

一方、小~中規模案件では、買手が自ら、あるいは、特定分野のみ外部の専門家を起用してDD結果に対応することが一般的です。典型的なDD発見事項としては、例えば以下のような内容が挙げられます。

  • ビジネスDDでコスト削減余地が見つかった
  • 財務DDで計数管理体制の不備が指摘された
  • 法務DDで労務管理の不備が発見された
  • ITDDで売主のシステムからの離脱(独自のシステム投資)の論点整理がなされた

小~中規模案件の場合、DD結果への対応難易度が高すぎて手も足も出ない、ということは少ないため、“やるべきことの明確化”“優先順位付け”、そして何より“やる気”が重要です。
責任者のもとで目標に向かって動き出し、諦めずに走り続けられれば、実施したDDが無駄になることは無いはずです。

株式会社LeverNでは、M&Aのアドバイザリー業務や財務DD業務を行っています。
また、小~中規模案件においては、M&A実行後(投資実行後)の計数管理強化支援や、やるべきことの整理、課題の優先順位付け等のサポートも行っています。
M&A実行時、実行後それぞれで、DD結果を有効活用するお手伝いが可能ですので、お気軽にお問い合わせください。