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IRR法の長所/短所と活用方法について②

今回はIRR法(Internal Rate of Return Method、内部収益率法)の2回目です。時間価値の学術的な説明はせず、直感的に分かるよう具体的な数値で解説します。

主な対象者

  • 事業会社の経営企画・財務・投資部門に所属している方
  • PEファンドの投資担当

IRR法では投資回収期間の早さが重要

IRR法には、投資回収がい方が有利に働くという特徴があります。
例えば、デットフリー・キャッシュフリー(企業価値=株式価値)でEBITDA倍率5倍の買収案件があったとします。
この会社は、減価償却費と同等程度の設備投資を行っていけば営業利益を維持できるとします。以下の2ケースで、IRR法を用いて算定してみましょう。
ケース①:FCFを蓄積し、5年後にEBITDA倍率5倍+FCF累積額で売却する
ケース②:FCFは全額配当で吸い上げつつも、10年以上は継続保有する

ケース①の5年後IRRは9.6%、対して、ケース②の10年後IRRは2.9%となりました。①の方が大きい値が算定されています。
一方で、上図にて”参考”で示したDCF法による割引CFの現在価値は、ケース①で6,773、ケース②で10,000と、②の方が大きい値となっています。
この結果からも、IRR法は、早期の投資回収をより重視する評価技法であることが分かると思います。
投資家に高い利回りを要求される投資ファンドが、時に、事業会社よりも高い買収価格を提示できる背景には、こうした評価技法の違いも影響しています。

一般に、投資ファンドは、有期限で、投資から回収までの期間が3~5年程度と短く、IRR法がフィットしやすいです。
対して、事業会社のM&Aでは、売却を前提としないことが多く、投資回収期間が長期化する傾向にあり、IRR法で算定すると利回りが小さくなりがちです。

設備投資意思決定への影響

IRR法は、買収後の設備投資の意思決定にも影響を与えます。
上の例の会社において、買収後3年目に、以下のような合理化投資の実行機会がやってきました。
・初期導入設備は1,000(5年均等償却)
・初期導入投資は税引前CFの向こう4年分に相当
・償却完了後も、償却費相当の更新投資を継続していけば収益の維持は可能

現実に上記のような採算が見込める投資機会があれば、それは多くの業種/企業において魅力的に映るはずです。
ではこの案件、前述のケース①及びケース②において、投資採算をIRR法で評価した場合にはどうなるでしょうか?

ケース②では、合理化投資後の10年後IRRが5.1%となり、合理化投資前と比べてIRRが上昇しましたが、逆に、ケース①では、合理化投資後の5年後IRRは7.3%と合理化投資前より下がってしまいました
このことが示唆するのは、IRR法では、一見魅力的に思える投資案件でも、実行時期と測定期間次第では、投資採算を押し下げる可能性があるということです。
ケース①のように、どうしても特定の時期/期間内に売却したい場合、IRR法では、この合理化投資は見送られる可能性があります。

まとめ

IRR法の活用は、設備投資の妨げになるのでしょうか?
そうは思いません。
設備投資採算を適切に試算し、実行後はその効果を測定し、乖離が生じた際には必要な打ち手を講ずる、そのプロセスが実践できる会社(≒規律ある会社)なら、ケース①のような場合でも、上記の合理化投資は推奨されるでしょう。
なぜなら、売却候補者に、設備投資の効果を説得力を持って説明できる、即ち、より良い事業計画を提示できるからです。

本稿第1回でも説明しましたが、IRR法による投資採算(評価)と、投資基準(規律)は一体となって有効に機能します。IRR法を採用している企業は、自社のみならず、買収先に対しても投資基準(規律)を導入し、正しい意思決定をしていきたいですね。

株式会社LeverNは、買収先(投資対象)の管理体制構築支援業務を得意としています。
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